理想のとまり木

ある小鳥が認識しうる「自然」の中から理想のとまり木を探し出すとせよ。
「自然」が小鳥の認識の限界量よりも大きい時、小鳥は全てのとまり木を試すことはできない。「自然」が小鳥の認識の限界量よりも小さい時、その中に存在するとまり木が理想であるかどうか確信することはできない。「自然」が大きくても小さくても理想のとまり木を探しているあいだには見つけることはできないのかもしれない。

ここに理想的な円柱形に加工された「小鳥のとまり木」がある。人間によって想像された「小鳥のとまり木」はいったいどの小鳥のための理想のとまり木になりうるだろう。もし世界から全ての小枝がなくなってしまっても、小鳥は「小鳥のとまり木」にとまるための理想の趾(あしゆび)を持つように進化するだろう。

僕はいくつかの素材を組み合わせインスタレーションをつくる。それは鳥小屋のようでもあるし罠のようでもある。素材の中には何らかの用途や機能を想定して作られたものが多々ある。しかしその想定がどこまで正しいかはもっとも確認することの難しいことのうちのひとつである。ギャラリーの中に鳥が飛んでいる。 結局のところ、これらのインスタレーションは恣意的なドローイングのようなもので、彼/彼女らにとってはそれはただ、あたらしい自然でしかないのだろう。 もしあなたが日々「自然」が更新され続けていることに気づいてしまったとしても、僕たちは鳥について心配するべきではない、彼/彼女らは「あたらしい自然」を認識し、自然の設計によって遠からず適応するだろう。もちろん「自然」を認識できるのは鳥に限った話ではない。ただし、「あたらしい自然」の中に人間の居場所が常にあり続けるわけではないことを、僕たちは知っておいたほうがよい。(2012年2月)


2012, Text